(アジア女性センター理事長)
内縁も含む夫から殺される女性は1年間に117人です(2006年)。また、DVは元夫からの被害や、デートDVが注目されてるように10・20代の若い女性の間でも広がっています。身体に対する暴力を受けたという女性は4人に一人、心理的な暴力、言葉の暴力も含めると女性の3人に一人が何らかのDVを経験しています。これらは特殊な問題ではないのです。
このことによって女性は、健康を害したり、労働意欲をなくしたり、子育てをするエネルギーを奪われたり、あるいは命を失ったりしており、本当に緊急に取り組まなければならない課題の一です。全国の配偶者暴力相談支援センターに寄せられる相談件数は、5年間で約2倍となりました。しかし、それは我慢していた女性が声を上げるようになったということだと思います。長年我慢してきて、高齢になってようやく相談できたという人たちもたくさんいらっしゃいます。子どもをかかえた専業主婦が経済的な困窮でDVから逃げられないという状況もあります。これまで、多くの被害女性が、「もっといい妻になれば夫も殴らないようになるのではないか」とも思ってきました。
被害女性にとっては、一時保護後の自立生活ができない経済的な貧窮も大きな課題です。”こういういい夫婦でなければいけない。” ”こういった家族が理想の家族”だというのはあるかと思いますが、そうではない多様な生き方・働き方、多様なカップルも認められ、選択できる社会に変えていかなければならないと思います。
終わりに~堤さんのまとめ~
日本の女性の地位は、世界130国中98位だとの記事が新聞に載っていました。これは経済的な地位や政治的な地位をすべて評価したもので、先進国では最下位です。 この状況をなんとか変えていかねばならないと思います。今日提起されたさまざまな課題について考えると、その根底に固定的性別役割分業の壁、一人ひとりの生き方や個性と能力が十分に尊重されない社会が見えてきます。 まず、”さまざまな課題に取り組む団体の会員になる。” ”ボランティアをする。”など、一人ではなく仲間を増やしましょう。そして、そこで学んだことを自分の問題として、仲間とともに課題を解決していく目標を設定し、行動を起こしていただきたい。自分たちでできることを実践し、一人ひとりの力がついていくと、政治も女性の声、行動を無視できないということにもなります。今日のこの場から、皆さんとともに社会を変えていこうという思いを共有していきたいと思います。