(NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ・福岡理事長)
全国で122万世帯余りの母子家庭があり(平成15年)、生別母子家庭の割合が増えています。国の政策は、給付から自立支援へと大きく軸足を変えていますが、母子家庭の年収は200万円以下が7割です。母子家庭の母親が仕事を探す場合、育児の都合から勤務時間、休日、勤務地などが限定され、パート労働を余儀なくされます。そのパートも1日4時間、週3回など細切れなので、生計を維持するためには、何カ所かでダブルワークをしなければならない状態で、どんどん貧困になっていると実感しています。この状態が続くと母子家庭は本当にどうなるのだろうと暗澹たる思いになります。
また、子供に何か問題があった場合、「勝手に離婚したから、あなたのせいではないか」というような風潮から、母子家庭が孤立してしまうということが多くあります。ネットワークを作るにしても、時間的、経済的余裕がなく、地域での活動なども難しい状況で、お母さんが病気になったら、子供はたちまち困ってしまうのが現状です。
女性は働き続け、経済力を持ち続けることがやはり大事です。仕事を持っていて離婚するか、専業主婦で離婚するかでは雲泥の差があります。パートと正社員の均等待遇や、正社員を基本として雇用するなど、企業にも社会的責任を果たしてもらいたいと考えています。
また、持ち家率が低い母子家庭のために公営住宅を増やしたり、お母さん一人が全部を担うのではなくて、たくさんの友達や地域の支えなど、子育ての社会化も必要です。経済的な苦しさから塾に行きたくても行けない子どもがさらに貧困になるという貧困の再生産にならないように、子どもの将来の選択肢が広がるような社会になってもらいたいと思います。